素集庵 - hut on a phase transition

散逸構造、形態形成、創発といった用語に触発された思考のメモ書き。趣味から政治の雑感も。

アニメ・特撮の名曲を語る(その3) 魔女っ子メグちゃん

魔女っ子メグちゃん(1974)

オープニング「魔女っ子メグちゃん」、エンディング「ひとりぼっちのメグ」

歌:前川陽子

 

「女の子の一番大切なものをあげるわ」と歌った山口百恵の「ひと夏の経験」に、二ヶ月先んじた事が、オープニング曲の歴史的価値を不動のものにする。

 

「真珠の涙を浮かべたら男の子なんてイチコロよ」とのオープニングでは、能動的な、少女から大人の女性を表現する一方、エンディングでは孤独で内省的な人間像を描き出す。

この一人の少女の心の在り様を捉えた対比は、少女のアンビバレントな心境であると同時に、あるべき次代の等身大の女性像とその描き方との対比でもあり、現代にまで続く、女性を表現する幅広い方法論に先鞭をつけた、画期的な一曲である。

魔法少女ものという、当時は女の子向けと確定的に位置付けられた作品の中で、野心的な試みでさえある。アニソンが、作品主題の表現から逸脱した点でも、転機となった曲として記憶されるべきである。


これらの意味で、歌手前川陽子であればこそ歌えた曲と言える。前年の1973年にキューティーハニーを歌った前川であればこそ、初代魔法少女魔法使いサリー」以来の作られた偶像としての魔法少女ではなく、等身大の少女像を現出させる事ができた。当時のアニソンで最もポピュラーだった堀江美都子には歌えなかったであろうことは、想像に難くない。

 

デジタルリマスター版も出ているので、ぜひご視聴頂きたい。

 

蛇足になるが、

本作は、次期魔界の女王を決める闘争としてストーリーがある。この「次期**王」を決めるという構図は、1983年の「仮面ライダーBLACK」にも現れる。もしかすると、普遍的な神話的構造なのかもしれない。