集字に使えるスマホアプリ・PCサイト
作品制作時に、集字(しゅうじ)、と言って、様々な古典から同じ字をかき集めて、書体比較検討を行うが、これに便利なスマホアプリを見つけた。
書道関係者は皆さんご存知かと思うけれど、紹介する。
「书法字典大全」 (书=書)
簡体字中文のアプリだが、日本語しか分からなくても十分使える。下の様に五体字(篆隷楷行草)で出せる。各文字は個々に拡大もできる。
草書の「永」の事例では、ベクトル字(拓本や写真の状態)で示しているが、どの書体でも同じ様に表示できる。
王羲之や唐の四大家、各種の造像記の他、大陸の有名どころは数多く収録している。
日本人の書もいくつか収録しているようで、圣武天皇(聖武天皇)、空海、日下部鸣鹤(日下部鳴鶴)、川上景年、岩谷一六(巖谷一六)、水岛修三(水島修三)、近卫信寻(近衛信尋)等の名が出てきた。
Android の Playストア では、「書法」で検索すると、一番上に出て来る「書道辞書」というのがそれ。
iPhone の App Store では、「書法字典」で検索すると、一番上に「书法字典大全-练字装裱作品必备」で出て来る。(练=錬、备=備)
↑はAndroid の画面。
似たようなアプリは他にもある。ほぼ全てが中文のアプリだが、色々試してみるのもよいだろう。
「书法字典大全」は漢字だけなので、すると、「かな」も欲しくなる。残念ながらスマホアプリはないようだが、PCサイトで ↓ のような大作がある。
漢字のアプリも「かな」のPCサイトも、古典籍全てを収録しているわけではないが、タブレット端末1台あれば、漢字も「かな」も大きく表示できるので、集字がとても捗るだろう。
この「日本古典籍くずし字データセット」は、↓ の一部である。
ここに、くずし字をAIで認識するアプリが紹介されていた。
早速使ってみた。
教科書に載っていた「寸松庵色紙 伝紀貫之筆」(遠山記念館(埼玉県川島町)蔵)の写真を読み込ませた(カメラで撮るだけ)。
カメラで撮った色紙と、その解析結果。色紙に書いてあるのは、↓の通り、という事になっている。
『
无(む)めの可(か)を所(そ)て尓(に)
うつしてとめたら(は/ば)
盤(は)る者(は)春(す)久(く/ぐ)と
も可(か)たみ那(な)ら万(ま)
志(し)
』
( )内のひらがなは変体仮名の読みを注記したもの。
この結果について、「まあまあ使える」と思うか、「役に立たない」と思うかは、使用目的や使う人の感性によって評価が分かれるところだろう。
精度100%、といかないのは現時点では仕方がない。この技術はまだまだ発展途上だが、急速に進化している真っ最中である。
これから先、AI機能・マシンパワーが向上すれば、研究者の手が回らず未だ読めていない古文書解読にも大いに寄与するだろう。
すると、遠からず、日本史研究に革命が起こり、市井の書家にもテクノロジーの恩恵が満ちていく。そう遠い話ではなかろう。大いに期待、それがこのアプリを使ってみた感想。