素集庵 - hut on a phase transition

散逸構造、形態形成、創発といった用語に触発された思考のメモ書き。趣味から政治の雑感も。

アニメに登場する書(その2) ガールズ&パンツァー

2012年のTVシリーズに始まり、OVA、劇場版を経て最終章シリーズが今も継続している大人気作「ガールズ&パンツァー」に出て来る書について。

 

この作品自体は大好きなのだが、書がたくさん出て来る割には、かなりぞんざいな扱いと言わざるを得ない。「戦車道」が武道、乙女のたしなみ、という設定であるからして、もう少し他の文芸に気を遣っても。。。

 

まず、「前進あるのみ」。Panzer Vor !!

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西住家。客間か。上はTV版第7話。下は劇場版。作中での、この間の時間経過は長くても2か月程度と推定される。 [2022/1/27訂正]上は回想シーンなので、半年程度と推定。

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掛かっている書は別物である。TV版の方が潤渇がはっきり出ていて勢いがあるし、本紙の幅が違う。軸先も違う。しかし、そんなことよりも、中廻も一文字もなく、地に本紙を張り付けただけの軸装なんて、あんまりではないか。

ちなみにこのシーン、テーブルも違う。

 

 

生徒会室の書。

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TV版第7話では、「三十六計逃げるに如かず」と読ませたいのであろう書が掛かっている。この文句は日本語であって、あえて漢文風に書くなら「三十六計不如逃」だろう。そこはこれ以上突っ込まないとして、

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劇場版になると、同じ場所の書が「謹厳実直」に変わっている。

作中、登場人物の成長やら、全国大会優勝を経て謙虚になったことを示している等々、好意的に解釈している。

 

 

生徒会室の奥にある部屋。生徒会長室か?

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上がTV版第7話。下が最終章第2話。作中の経過時間は半年くらいと推定。

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「誠心」も「戦車道」と字句は同じでも、書は別物に変わっている。架け替える書が充実している学校とも言えるが、単にアニメ制作での作画、背景設定が甘いのではないか。

さつまいもの絵も変わっている。品種は「紅はるか」?

 

生徒会長室?に掛かっているもう一つの書について。

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TV版第1話より。「戦車道」の書も、第7話のものと別物だが、赤矢印で示したのが「校訓 強く 気高く 美しく」と隷書風に書いてある。これが、、、

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最終章第3話より。TV版第1話から、作中経過時間8か月程度と推定。赤矢印の書は、読めないが全く別の書に置き換わっている。制作の方では10年経ってるから、演出も変えたということなのかもしれないが、「校訓」を取り外してよいのか?(笑)

 

新旧比較のような話はここまでにして、他の書も見ておきたい。

 

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最終章第1話より、知波単学園内。この「勇気凛凛」は、女性の団結と躍動を表しているようで好き。

 

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劇場版より。作中、書全体が映らないのだが、「兼愛無私」と推測。墨子。かなり良さそうな書なので全体を見たかった。

 

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劇場版より。「島田愛里寿 寄贈」がなんとなく北魏楷書っぽいと思った。

 

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TV版第8話より。マークI戦車の襖絵に感心する、または笑うべきシーン。さすが家元。だが書の方は「猪突猛進」も「紫電一閃」も頂けない。

 

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シリーズ中、一番気に入った書がこれ。OVA「これが本当のアンツィオ戦です!」より。日本の八九式中戦車を、イタリアの快速戦車CV33 (Carro Veloce) に見立てるべく書かれた、現代風かな文字「かるろべろーちぇ」。

外来語を平仮名表記すると、それだけで語感が全く変化して笑いを誘う場合がある。それをとてもうまく使って、アニメ作品の演出を際立たせた書作品と言える。

 

このシリーズ、他にも書が登場しているので、見る時には関心を向けてみるのも面白いと思う。

書は自由。