素集庵 - hut on a phase transition

散逸構造、形態形成、創発といった用語に触発された思考のメモ書き。趣味から政治の雑感も。

アニメ・特撮の名曲を語る(その4) ハクション大魔王の歌

ハクション大魔王(1969-1970)

初期はオープニング、後にはエンディングとして使われた。

 

アニメ作品の主題歌は、草創期から、本編のイメージを代弁、あるいは本編そのものを規定するべく、様々な音楽的実験の場としても存在していた。流行歌の制約がなかったとしか思えない、自由な時空間であった。

ハクション大魔王の歌」は、その成果の極致であり、様々な面で完成されたものである。

 

60年代エレクトリック・ギター人気の歪み系エフェクター、ファズの音に始まるイントロが、本編の時代と不条理性を象徴し、その上で、この曲は演歌とロックの融合である点に注目する。

すなわち、こぶしを効かせる嶋崎由理が当時12か13歳だった事にも驚くが、日本歌謡と当時の時代を象徴するようなロックンロールとの融合にして、本編の作品世界と境界を持たないほどに完成されたイメージを紡ぎ出している点で、歴史に残る唯一無二の名曲となっている。

アニメ作品およびアニソンを超え、音楽作品としての成功体験として高く評価されるべきである。この構造を持つ曲は、寡聞にして他に知らない。

 

この曲がいかに強力であったかは、昨年放映された50年振りの第二期、と言ってよいのか新作の「ハクション大魔王2020」のオープニング曲「サテスハクション」が傍証している。

聞けばすぐ分かるが、リフは往時のまま、更には、ザ・ローリング・ストーンズの大ヒット曲「Satisfaction」のオマージュにもなっている。それほどのビッグタイトルを持って来なければ、第2期のオープニングにはなれなかったと言えよう。

ヒトの記憶とは残酷でさえある。

 

個人的には、

ジャズピアニストの板橋文夫が、90年代以降、民謡とコラボした野心作を発表しているが、この大魔王の歌にインスピレーションの元があったら面白いのに、と妄想している、等々。

 

今なお、新しい。