素集庵 - hut on a phase transition

散逸構造、形態形成、創発といった用語に触発された思考のメモ書き。趣味から政治の雑感も。

アニメ・特撮の名曲を語る(その1) 帰ってきたウルトラマン

帰ってきたウルトラマン (1971-1972)

 

本編のウルトラマンは、初代ウルトラマンよりピンチが多く、時には敗れる苦渋を舐める。

この、応援したくなるヒーローの在り方が、ファンキーなイントロと、正統派ヒーロー礼賛の分かりやすいメロディーとが織り成すコントラストと相俟って、高度成長期の終わりを迎えた日本の陰影と重なり、歴史に残る名曲、歴史そのものになった。

 

本編ではオープニングに数秒、おどろおどろしいアイキャッチが入る。歌のCD音源には普通入っていない。なので、曲に含めないと解するべきだろうが、番組を見ていると、含めて考えた方が良いように思えてくる。

このアイキャッチを含めて考えれば、移り行くイメージを大胆に紡ぐ楽曲は、日本史的結節点を現した世相の表現として、これ以上ない感動を与える。

 

さて、

現在では、声優がオープニング・エンディングを歌うアニメは普通にあるが、

帰ってきたウルトラマン」は、主演俳優が主題歌を歌う、アニメ・特撮ジャンルでは最初期の曲であると考えられる。

(同年に放映された「仮面ライダー」のオープニング「レッツゴー!!ライダーキック」には主人公役である藤岡弘の版と子門真人の版がある。)

主演の団次郎によって、現在にまで続く、歴史が始まったと言っても過言ではなかろう。

 

ちなみに映画では、例えば、1949年の映画「悲しき口笛」で既に、同名の主題歌を主演の美空ひばりが歌う事がなされている。

 

帰ってきたウルトラマンの場合、主人公役に歌わせるのは、たぶんに経済的要請があったようだが、形式の転写、その後の現在に続く複製、自己増殖していく様は、形態形成の一事例として捉える事ができ、生命進化の態様さえ彷彿とさせる。

 

本稿の最後に紹介しておきたい。

布川俊樹プロジェクト「ウルトラマンジャズ」(1998)に収められた、スローバラードのギターソロによる「帰ってきたウルトラマン」は、ノスタルジーを超えた憧憬と昭和哀歌、歴史に想いを致す名演。ファン必聴。